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東京地方裁判所 昭和59年(ワ)6735号 判決 1988年6月08日

原告 川浪正資

<ほか二名>

右原告ら訴訟代理人弁護士 大塚利彦

被告 川浪薫

右訴訟代理人弁護士 荒木新一

同 荒木邦一

同 田辺宜克

右訴訟復代理人弁護士 下井善廣

同 加藤博史

同 佐藤敦史

同 井手大作

主文

一  原告らと被告との間において、別紙物件目録記載一の土地と同目録記載二の土地との境界は、別紙図面(一)のハ'ニ'点を直線で結んだ線であると確定する。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

主文同旨

二  被告

1  別紙物件目録記載一の土地と同目録記載二の土地との境界は別紙図面(二)のPP'の点を直線で結んだ線付近であると確定する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  別紙物件目録記載一の土地(以下「甲地」という)は、もと川浪源助の所有であったが、同人は昭和五四年六月二六日死亡し、原告ら及び被告がこれを相続した。

2  被告は、右土地の北側にこれと隣接する同目録記載二の土地(以下「乙地」という)を所有している。

3  右両地の境界は別紙図面(一)のハ'ニ'の点を結ぶ直線であるところ、被告はこれを争う。

よって、原告らは甲地と乙地との境界の確定を求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1、2の事実は認める。同3のうち、本件各土地の境界が原告ら主張の直線であることは争うが、その余は認める。

2  甲、乙両地は、被告が経営する旅館の敷地として長期間これを一体として占有管理してきたため、その境界は不分明であるが、被告が昭和四五年に右土地上にビルを建築する以前は、甲地上には木造旅館建物が、また乙地上には木造居宅建物(これも後には被告が買取り旅館拡張部分として使用していた)が、それぞれ敷地一杯に建築されており、右両建物の間には幅一間程の通路が存在していたから、その中心線である別紙図面(二)のPP'点を直線で結んだ線付近を甲乙両地の境界とするのが相当である。

第三証拠《省略》

理由

一  甲地、乙地の現在の所有、右両地が隣接していること、右両地の境界に争いがあることは、当事者間に争いがない。

二  右一項の争いのない事実に、《証拠省略》を併せれば、甲地は、昭和二〇年代に亡川浪源助が取得したものであるが、被告はその後に自己が取得した乙地とともに自己の経営する旅館の敷地として一体として使用していたこと、当時、甲地上には木造旅館建物が、乙地上には木造居宅建物(被告買取後は旅館拡張部分として使用)が、それぞれの敷地一杯に建築されており、右両建物の間には幅一間程の通路が存在していたこと、被告は昭和四五年これらの建物を取壊して六階建てのビルを建築したが、その建築配置図によれば右ビルは甲乙両地に跨って建築されることが予定されており、現実に建築されたビルは甲地に越境して建築されている節があること、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の事実によると、本件両地は被告によりその境界を意識することなく一体として旅館の敷地として使用されてきており、その占有状態から甲乙両地の境界を判定することは困難である。

二  《証拠省略》によると、次の事実が認められる。即ち、

(一)  本件甲乙両地を含む歌舞伎町二丁目(旧西大久保一丁目)四五五番(以下地番のみ表示する)の一団の街区は、付近の街区とともに昭和二七年一二月一六日の戦災復興土地区画整理事業による換地処分にともなって実測されており、その確定図が作成されていること、右確定図は尺貫法による数値で表示されているのでメートル法に換算して検測すると多少の誤差が生じること

(二)  鑑定人が右確定図により四五五番の一団の街区の外周を測定したところ、その外周は確定図のそれとはほぼ一致すること、そして甲乙地付近の位置関係は別紙添付図面(一)のとおり、南から順に北へ四五五番の一、甲地(四五五番の二)、乙地(四五五番の三)、四五五番の一二、四五五番の四と並び、長方形(但し南東角及び北東角は角切りされている)の形をしており、右五筆の東側は南北に通じる幅員八メートルの道路に、また四五五番の一の南側及び四五五番の四の北側は各々東西に通じる幅員六メートルの道路になっていること、鑑定人が東京都財務局用地部境界確定課保管の公共用地道路敷境界確定図により、四五五番の一と道路との境界地点(別紙図面(一)の二五六、二五七、二五九の各点、以下に示す符号は、断わりのない限り同図面上のものである)を求め右各点間の距離を実測すると、その距離は前記確定図のそれに一致すること、また右と同様にして四五五番の四と道路との境界地点(二五八、二五四、二五五の各点)を求めて右各点間の距離を実測すると、その距離も前記確定図のそれに一致すること

(三)  甲地とその南隣に位置する四五五番一との境界付近には両土地の境界を示すためのものと思われる御影石の境界標石が二六四及び九四の点に存在していること、そして、二五六、二六四点の御影石との間の距離は一〇・〇四八メートル、二五九と九四点の御影石との間の距離は一三・四九五メートル、と確定図の距離よりそれぞれ〇・〇四八、〇・〇五八メートル長いものの確定図の距離にほぼ一致すること

(四)  甲地と乙地との東側(道路側)の境界点と思われる二六三(ニ')と御影石のある二六四点間の距離は一七・三一七メートル、また西側の境界点と思われる二六八(ハ')と二六五(御影石のある二六四、九四線を九四から西へ〇・四二七メートル延長した地点)点間の距離は一七・〇六二メートル、と確定図のそれよりそれぞれ〇・〇四七、〇・〇四八メートル短いが、甲地と四五五番の一合わせた東側外周の距離、即ち二五九、二五七、二五六、二六四、二六三点間の合計距離及び西側外周である二五九、九四(=二六五)、二六八点間の合計距離は、確定図の距離にほぼ一致すること

他方、四五五番の四、四五五番の一二、乙地の東側外周である二五八、二五四、二五五、二六〇、二六一、二四五、二六三点間の距離及び西側外周である二五八、二六六、二六七、二六八点間の距離は、確定図の距離にほぼ一致すること

従って、右の二六三、二六四点間及び二六八、二六五点間の距離の誤差は、四五五番の一及び甲地で調整すべきものであって、乙地、四五五番の一二及び四五五番の四には影響を及ぼさないものと認められること

(五)  甲地の公簿上の面積は二二三・一〇平方メートルであり、二六八、二六三点を結ぶ直線を甲乙両地の境界線として二六五、二六四、二六三、二六八、二六五点の範囲を実測すると、その面積は二二二・八三平方メートルとなって、公簿上の面積より〇・二七平方メートル少なくなり、一方、乙地の面積は一〇七・八二平方メートルとなって、公簿上の面積より〇・四五平方メートル多くなること

ちなみに、被告の主張する別紙図面(二)のPP'点を結ぶ直線付近を境界線とすると、右境界線は二六八、二六三点を結ぶ線より南側に位置することになるから、乙地の面積は右面積より更に多くなり、逆に甲地は同面積だけ少なくなって、公簿上の面積との間で大きな誤差が生じること

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

三  以上の認定事実によると、甲地と乙地との境界は、前記確定図を基にして判定するのが合理的であって、二六八(ハ')、二六三(ニ')点を結ぶ直線と確定するのが相当であり、これに反する被告の主張は右判断を覆すに足りるものではない。

なお、隣接する土地の一方または双方が共有に属する場合の境界確定の訴は固有必要的共同訴訟と解すべきであるが、本件のように、甲地は原告ら及び被告の共有であり、かつ被告において甲地と被告単独所有の乙地との境界を争っていて、原告らは被告と共同行為をすることができず、しかも原告らは甲地の所有者として右境界の確定を求めるべき必要性と利益があることが認められる場合においては、甲地につき被告を除く他の共有者全員である原告らが共同訴訟人となっていれば足りるものというべきであるから、当事者適格につき欠けるところはない。従って、被告の本案前の申立は理由がない。

四  よって、本件境界をハ'ニ'線と確定することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 阿部則之)

<以下省略>

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